little notes from jiro of kikkake

essay

あと少し

キッチンに三本のオイルボトルを置いてある。

オリーブオイル、胡麻油、米油。

どれもまんべんなく使っているはずなのに、
ふと気がつくと、
全部がだいたい残り一割くらいに
なっていることが多い気がする。

ランダムに使っているなら、
減り方もバラバラになりそうなのに、
なぜか揃って「あと少し」になる。

なんでだろう。
考えられる可能性はふたつ。

ひとつめは、気のせい。
たまたま全部少ないタイミングで気づいているだけ、
という偶然説。

ふたつめは、オイルの補充をまとめてやっている説。

補充ってどうしても手が汚れるから、
どうせやるなら一気にやってしまう。
だから減るタイミングも揃う、という考え。

…と思ったけれど、ふたつめのは違う。
だって、やっていない。

補充しようと思ったら
そもそもストックがなかった、
なんてことはよくあるし、
三種類すべてのストックが
揃っていることの方が珍しい。

となると、やっぱりただの気のせいなのかな。

そもそも、さっき料理をしたときに
三本とも「あと少し」だったから、
あ、またかと思ったんだけど。

うーん。やっぱり、わからない。
 
 
あと少し

天気

ゴールデンウィークなのに、東京は雨。

祝日に雨が降ると、
なぜか世の中のお店のことが気になってしまう。

お客さんがたくさん来ることを想定して、
いろいろ仕込んでいたんだろうな、とか。
大変だろうな、とか。

ふと、「世の中のお店」って
自分にとってどこなんだろうと考えてみた。

具体的に思い浮かぶ場所はないのだけれど、
ラーメン屋も、ディズニーランドも、公園も、
なんとなく全部含んでいる気がする。

雨が降ると行かなそうな場所を、
まとめてそう呼んでいるのかもしれない。

とはいえ、完全な屋内施設だったり、
むしろ雨の方が客入りがよくなるお店もあるはずで、
天気は数ある要素のひとつに過ぎないのだろうな。

それでも、商売をしている以上、
天気はどうしても避けられないもの。
コントロールできない前提で、
うまく付き合っていくしかないんだろうなと思う。

kikkakeの撮影でも、
天気にはよく振り回される。

一喜一憂しながらも、
これからも続けていくつもりなので、
少しずつ、仲良くやっていけたらいいなと思う。

いい日もあれば、そうじゃない日もある。
そんなものだ。
 
 
天気

閃き

お風呂に入っているときに、
ふとアイディアが思いつく。
そんな話を聞いたことがあるけれど、
僕はお風呂で何かを思いついた記憶があまりない。

理由はたぶん、このふたつ。

そもそも湯船につからないことと、
つかったとしても、
雑誌を読むか携帯を持ち込んでしまうこと。

のんびり考えられて、
ちゃんとリラックスできたときに、
アイディアは浮かぶのだろうか。

自分にとってはどこだろうと考えてみたら、
運転中、特に帰り道に、
ふと何かを思いつくことがある。

ということは、
僕にとっての車は、
のんびり考えられて、
リラックスできる場所なのかもしれない。

たしかに、そんな気がする。

思い返してみると、
学生の頃も、
自転車で帰っているときに
その日の反省をしていた。

帰り道というのは、
何かを考えさせる時間なのかもしれない。

……なんてことを、
お風呂で考えていた。
 
 
閃き

迷子

仕事で、東京ミッドタウンに行く用があった。

到着したはいいものの、ビルが大きすぎて
オフィスエントランスがどこかわからず迷子に。

迷子だと悟られないように、
お買い物をしている雰囲気を出しながら歩く。

なんとか2階のオフィスエントランスに到着。
事前に伝えられていた番号を
ディスプレイに打ち込むと、
QRコードが書かれた紙が出てくる。

それを電車の改札のようなところにかざすと、
パタッと扉が開いて、
エレベーターホールへ。

まずは2階から30階へ。
30階は第2受付のような場所で、
階段でいう踊り場みたいな感じ。

少し緊張していた僕は、一旦トイレへ。
看板を頼りに進んでいくと、行き止まり。

右の壁が開くのかと思ったら、
左の壁が開いてびっくり。
ミッドタウンの洗礼を受ける。

気を取り直して、
30階からさらに上へ。

目的の階に着いて窓を見ると、
東京を一望できる景色。
おしゃれな内装の会社の入口を見て思った。

これが、東京か。

一度はこういう高いビルで
働いてみたかったなぁと思いつつ、
忘れ物をしたら、取りに戻るの大変そうだなとも思う。

帰りも同じ30階のトイレに寄った僕は、
右が開きそうで左が開くあのトイレに、
迷わずすっと入ったのだった。
 
 
迷子

どっち

日本語って難しい。

「前」と「後ろ」って、
物理的には前が前方、後ろが後方を表すのに、
時間軸だと前が過去、後ろが未来を表す。
だから、どっちがどっちかわからなくなることがある。

「前」と「後ろ」って、
どちらの視点で見るかによって向きが変わる。
僕から見た前後なのか、
相手から見た前後なのかで、
意味が逆になってしまうこともある。

そのせいで、判断に迷ったり、
間違えてしまうことがある。

YouTubeの撮影中。
撮影担当のコネギから、
いろいろと指示が入る。

「ちょっと前に戻ったところから、もう一回。」
「もう少し前に動かして。」
「もうちょっと前を向いて。」
「ちょっと話が前後しちゃうんだけど。」

自分は料理をしているので、
下を向いていることが多い。

だから言葉だけで判断しないといけないのだけれど、
これがなかなか難しい。

あらためて考えると日本語って、
ニュアンスで伝えることが多い言語だなと思う。

撮影のように、具体的に動きを伝える場面では、
少し不向きなところもあるのかもしれない。

…とはいえ、
コネギの伝え方が悪いというわけではない。
 
 
どっち

松竹梅

子供の頃からわからなかったこと、
松竹梅、どっちが上なのか。

大人になった今でも
ちょっと考えないと、
松と梅のどっちが上なのかがわからない。

松と梅、
どちらも同じくらいの存在に見えてしまって、
どうしても序列のイメージが湧かない。

松の方が上だから、
「上松さん」と覚えようとしたこともあるけれど、
次に使うのが数年後だったりするので、
上松さんと覚えたのか、上梅さんと覚えたのか、
よくわからなくなってしまう。

そしてこの話に関係なさそうだけれど、
竹が真ん中というのも、なんだか納得がいかない。
竹って、真っ直ぐぐんぐん伸びていくし、
どちらかというと
上か下に振り切っていそうな気がする。

背の順だったら、たけのこ姿で先頭か、
真っ直ぐ伸びた状態で一番後ろなのではないのか。

そんなふうに、
いつまで経っても腑に落ちない松竹梅だけれど、
調べてみたら、由来は意外とシンプル。

江戸時代、
飲食店が「特上・上・並」という表現を避けて、
注文しやすいように
縁起物の松竹梅を当てはめたのが始まりらしい。

なるほど。
わかりにくさは意図的だったのか。

「特上・上、並」ですら
「上・中・下」とは言わない工夫だもんね。
序列というよりはバリエーション。

商売をする人たちが、
お客さんに気持ちよく選んでもらうために工夫する。
こういう気持ちは時代が違っても変わらないんだなと、
なんか色々と納得した。

結局、松竹梅がどっちが上かは
今後もわからないと思うけど。
 
 
松竹梅